男性にしかない前立腺は加齢とともに、前立腺が大きくなります。日本の55歳以上の男性の2割、5人に1人 前立腺肥大があることがわかっています。症状としては『頻尿、尿が出にくい』があります。場合によっては前立腺腫瘍(癌)マーカー(PSA)が上昇する方もいます。
動画で解説
前立腺肥大症はトイレが近い(頻尿)から始まり、尿の出が悪くなるまで、症状が様々です。
検査・治療について動画と作成しましたので、是非ご覧ください。
慢性前立腺炎・慢性骨盤痛症候群 痛みの原因は
症状
前立腺肥大の症状は、具体的には次の7つがあげられます。
- 1「残尿感がある」
- 排尿後もまだ尿が残っている感じがあり、スッキリしない症状です。
- 2「排尿の回数が多い」
- 2時間に2回以上トイレに行くなど、トイレが近くなる症状です。
- 3「尿が何度も途切れる」
- 排尿の途中で尿が途切れてしまう症状です。
- 4「トイレを我慢するのが難しい」
- 急に強い尿意を催し、トイレを我慢するのがつらくなる症状です。
- 5「尿の勢いが弱い」
- 尿の出方に勢いがなくなってしまう症状です。
- 6「尿をする時にいきむ」
- お腹に力を入れないと尿がなかなか出ない症状です。
- 7「夜中に何度もトイレに行く」
- 夜中に何度もトイレに行きたくなり起きてしまう症状です。
上記の症状が出た時は日常生活に支障が出る前に受診をお勧めします。
検査・診断
診断するのに必要なのは問診・質問票(IPSS:国際前立腺症状スコア)です。点数化することで一番困っている症状がわかり、必要な検査を行い、本当に治療が必要か他の病気(過活動膀胱、糖尿病神経症合併症、腹部手術の合併症など)によるものか判断します。
当院では超音波(エコー)で排尿後の残尿を確認、前立腺の大きさを測り、日を改めて尿流量測定(ウロフロメトリー)を行い、前立腺がどの程度、尿の出にくさに影響しているか検査をします。直腸内指診を行うことで前立腺癌の有無もチェックします。血液検査でPSA(前立腺がんマーカー)を行い、がんの鑑別検査もしております。
治療
1治療薬・内服薬
- 1α1受容体遮断薬(α1ブロッカー)(薬品名:ハルナール、フリバス、ユリーフなど他に後発品あり)
- 前立腺肥大症の症状はこの内服薬で改善することが多く、緊張している前立腺や尿道の筋肉が、ゆるめて、尿をスムーズに出しやすくする。薬の作用については様々ですのでその症状にあった治療選択が必要です。副作用;血圧低下、ふらつき、逆行性射精など
- 2 5α還元酵素阻害薬(薬品名;アボルブなど)
- 前立腺癌ではなく、単に巨大な前立腺肥大の場合は抗男性ホルモン薬で尿の出にくさが改善する場合があります。前立腺肥大症の手術勧められた方でもその前に内服するのもよいかもしれません。
この内服薬はPSAが低下しますので定期的なPSAを測定する必要があります。
海外では発毛効果があることも立証されております。
*前立腺癌ではないことをPSAなどでチェックするように勧められております。悪性度の高い癌を見落とす可能性があるのではないか、悪性度の低い前立腺癌を縮小するのではないかと現在、学会で色々な論文が発表されており、検証中です。 - 3 漢方薬、植物製剤(薬品名;エビプロスタット、セルニルトンなど)
- これらの薬は症状をやわらげるために使われます。一般的に副作用は多くはないといわれていますが、効き目もゆるやかにあらわれます。現在は植物製剤の抗酸化作用、抗炎症作用が注目されております。
- 4 ホスホジエステラーゼ5阻害薬(薬品名;ザルティア)
- 尿道や前立腺の平滑筋細胞においてホスホジエステラーゼ5(PDE5)を阻害することにより、局所のcGMPの分解を阻害し平滑筋を弛緩させます。
これにより血流及び酸素供給が増加し、前立腺肥大症に伴う排尿障害の症状が緩和されるものと考えられている。例えるなら、前立腺の若返りを促しているとも考えられます。
新しい前立腺肥大症の治療薬です。 - 5 抗アンドロゲン薬(抗男性ホルモン剤)(薬品名;プロスタール、パーセリンなど)
- 最近は処方することが少なくなった内服薬ではありますが、テストステロンやジヒドロテストステロンといったアンドロゲン(男性ホルモン)を抑制する薬です。
2手術
今でも全国で内視鏡治療(TURP(経尿道的前立腺切除術)、HoLEP(ホルミウムレーザー前立腺核出術)、PVP(経尿道的前立腺レーザー蒸散術))が盛んに行われており、以前に比べて機械、医師の技術が向上しており、安全に行えるようになっております。当院では前立腺の手術は行っておりませんので河北総合病院、杏林大学付属病院などにご紹介しております。現在、前立腺肥大症の手術で最新治療PVP(経尿道的前立腺レーザー蒸散術)が近隣の河北総合病院で行えるようになっており、手術をご希望の方はご紹介させて頂いております。出血も少なく、安全に入院が4泊5日できることとなっております。
前立腺が超音波であまりに大きい方には抗男性ホルモン剤を投与してある程度前立腺の大きさを小さくして治療方法を判断いたします。
前立腺肥大症は最近では過活動膀胱(OAB)と併発していることもあり、専門医でのしっかりした診断をお勧めしております。頻尿を主訴に過活動膀胱の治療薬を内服して“尿の出にくさ”が現れ、さらに症状がひどくなる方が多く当院を受診されております。まずはお気軽にご相談ください。
注意
- 市販薬の風邪薬(感冒薬)で尿の出にくくなるかたは是非受診をお早目に
- 尿閉(尿がたまっているのに尿がでない)で受診される方が多く、その多くは前立腺肥大症が原因ですが、まれに飲酒や市販薬の風邪薬(感冒薬)が原因でおきる患者さまもいらっしゃいます。