男性更年期障害は、男性が年齢とともに男性ホルモン(テストステロン)が徐々に低下することによって、性機能低下や精神神経症状などの諸症状があらわれる疾患です。 男性ホルモンは男性の生殖機能に関与する他にも、脳に働きかけ意欲(やる気、元気)を促し、筋肉を増強させ、骨量を維持するなど様々な働きをしています。 最近非常に注目をされている病気で男性にとっては見逃してはいけない病気といわれております。 サプリメントを飲んでいるが、疲れがとれない。内科や神経科にかかっているが、体調がすぐれない方にぜひ受診をお勧めします。
動画で解説
LOH症候群〜うつ病かなと思ったら泌尿器科へ
症状
現在はアンチエイジングという言葉もかなり普及してきました。若いうちから男性ホルモン(テストステロン)が下がらない生活を送ることは、将来、 高齢者になった時の生活の質を大幅に高めることにもつながります。特に働き盛りの男性にとっては男性ホルモンの値は大切で仕事ができる男性はホルモン値が高いとも言われております。 現在、会社の健康診断にも男性ホルモン値を測定することを勧めております。年齢だから、老化だからといって決しては恥ずかしがることはありません。
・ED(勃起不全)は脳梗塞、狭心症の前兆とも言われております。実際、脳梗塞、狭心症の発作を起こした方は以前からEDがある方が高率です。
・男性更年期障害は30歳代後半から70歳近くまで幅広い年齢で起こりえます。 神経質でまじめ、几帳面な人は男性更年期障害を発症しやすいと言われています。
・若年者で自分の仕事のやる気がでない。仕事をしてもうまくいかない、他人との人間関係がうまくいかないなどの症状で困って来院される方もいます。男性美容で通院している方もぜひ一度、検査をお勧めします。
・高齢者の場合、記憶力の低下、筋力の低下、骨粗しょう症などの日常生活に支障がでることもあります。泌尿器科を受診されている患者様で、夜間頻尿が原因で受診され、過活動膀胱の治療を受けていたが一向によくならない方もLOH症候群である可能性があります。
診断と検査
一般的に様々な症状のチェックのための男性更年期質問票(AMS:Aging males symptoms )で症状の評価をします。来院される際は是非記載をしてください。↑印刷マークで印刷してください。
「こころ(精神)」に関するもの:5項目、「身体」に関するもの:7項目、「性機能」に関するもの: 5項目
つぎに、採血(血液検査)による男性ホルモン(フリーテストステロン:「遊離」テストステロン)値測定や前立腺がん検査(PSA値測定)を行うことから始めます。
また、前立腺肥大症がないかどうかも治療に関わるため、超音波検査で前立腺の検査をします。
男性更年期は医学的にはっきり定義づけされたわけではなく、男性ホルモン(テストステロン)値が低いからといってそれだけで男性更年期と診断できるわけではありません。
テストステロンのうち「総」テストステロンは60歳くらいまではほとんど減少しませんが、「遊離」テストステロンは20 歳代を境に年齢と共に減少してきます。 当院ではどちらも測定できますが、日内変動があり、午前中、採血は午前11時までに採取させていただきます。
しかし、テストステロン値と症状の重症度が相関しないことから、実際は以前の状態からどの程度減少したかが診断の参考となると考えられます。
それでもはっきりしない場合には、診断的治療として薬剤(漢方薬など)投与を開始し、その反応を見るという場合もあります。EDで内服薬(バイアグラ、レビトラ、シアリスなど)を飲んでも全く反応がない方はもしかすると男性ホルモンが低い可能性があります。
【補足】
一般的に男性ホルモン(テストステロン)が高いと男性型脱毛(AGA)、前立腺癌になると思われるかもしれませんが、 5α還元酵素という酵素が関与することで悪玉ホルモンのジヒドロテストステロン(DHT)に変化したときに、毛髪や前立腺に悪影響を及ぼすのです。 つまり、DHTを抑えることが予防となると思われます。
治療方法
男性ホルモンの注射による男性ホルモン補充療法が一般的です。その他、漢方薬(補中益気湯など)や精神安定剤(選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)の抗うつ剤)や 睡眠薬などを使って治療することもあります。他に、シアリスのようなED治療薬を使用することもあります。
男性ホルモン増強食・運動
お勧めはタマネギ、ニンニクです。俗にいう“精のつく食品”はよいのです。ガーリックステーキ、かつおのたたきなどはテストステロンを上げます。 生活習慣の改善も有効であり、お酒を控え、運動をする習慣を持つようになった方は体調が良くなり、更年期症状も改善することもあります。
内服加療(漢方薬、PDE5阻害薬)
①補中益気湯・八味地黄丸
②性機能症状が強い場合にはED治療(PDE5阻害薬)
③心理症状が強い場合は心療内科と相談し抗うつ薬、抗不安薬治療
④身体症状が強い場合、骨粗しょう症が疑われる場合は整形外科と相談し薬物治療
ホルモン補充療法
現在は男性ホルモンの注射による男性ホルモン補充療法(エナルモンデポ(エナント酸テストステロン))が一般的です。
適応は、男性ホルモンが低値を示した方で、前立腺肥大症やがんのない方となります。2~3週間に1回通院していただき、男性ホルモン投与しております。グローミン(保険適応ではありません)の塗り薬などもございますが、市販されておりますので外来では処方はできません。
効果の表れ方は患者さんによって様々ですが、典型的な方では注射直後より効果があらわれます。 効果判定は3か月ごとに評価を行います。どれくらい継続するかですが、これも個人で様々であり、短期投与から数十年の長期投与まで個人差があります。 ただ、挙児希望ある方にはホルモン補充療法は精子の数が減るという副作用があるためなるべく行いません。PSA(前立腺癌マーカー)2ng/ml以上ではホルモン補充療法は行いません。
副作用では血液が多く作られる(多血症)があります。貧血の方などでは貧血が改善する場合もあります。
わからないことはぜひ泌尿器科医師にご相談ください